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酒場店主のブログ

『アーベド・サラーマの人生のある一日』

2012年にヨルダン川西岸地区でスクールバス
がセミトレーナーに衝突されて横転、炎上し、パ
レスチナ人の児童6名と教師1名が死亡する痛ま
しい事故が起きた。そのなかの児童ひとりがアー
ベド・サラーマの息子だった。アーベドの視点を
軸に、その妻や家族、バスの運転手、救助に当た
った人、分離壁の建築家など、立場や考えの異な
る人たち、それぞれの半生を語りだす。目と鼻の
先にイスラエルの救助隊が居たのに、なぜ事故は
放置されたのか。捜査官も、弁護士も、判事も誰
ひとりとして、この惨事の本当の原因をあげなか
った。イスラエルに占領されるとは、こういうこ
となのか。著者のネイサン・スロールはエルサレ
ム在住のユダヤ人である。「イスラエルを批判す
るイスラエル人」として難解なテーマに向き合い
強い信念を持ってこの問題に取り組んできたこと
が本書よりうかがえます。頁を捲ることで、報道
番組などでは見えてはこない占領下の現実と苦難
を少しだけではありますが知ることが出来ました。