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酒場店主のブログ

独り言

『悪夢』

読売新聞・編集手帳より カフカ『変身』の主人
公は、目覚めると巨大な虫になっていた。努力が
報われないこともあれば、重病を患うこともある。
思うままにならない人生を、カフカは極端な形で
示したといわれる。どこでそうなったのか。金銭
感覚がまひしたギャンブラーに変身しきらないう
ちに自ら止めるか、周囲に助けを求めてほしかっ
たものである。米・大リーグで活躍する大谷翔平
選手の通訳、水原一平氏をドジャースが解雇した。
もう何年になるだろう。野球シーズンの朝、テレ
ビをつけてスーパースターに寄り添う水原氏を見
ないことはなかった。侍ジャパンが世界制覇した
シーンにもその顔はあった。朝の気分から思い出
にいたるまで、たくさんの日常がこわれてしまっ
た。カフカは創作ノートに記している。<生きる
ことは、たえずわき道にそれていくことだ。本当
はどこに向かうはずだったのか、振り返ってみる
ことさえ許されない>。幸せにしか見えなかった
人のわき道へのそれ方が、悲しい。 スーパース
ターと専属通訳、ふたり揃ってドジャースの移籍
にファンは歓迎したハズ。多くの人が頭から冷や
水を掛けられた気分だろう、悪夢である。悲しい。