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『コトリ(子取り)がくる』

奥田英朗の【罪の轍】を読み終える。読み応え
あり、圧巻の600頁でした。物語はオリンピ
ック前年、昭和38年の東京が舞台。当時、世
間を震撼させた『吉展ちゃん誘拐殺人事件』を
下敷きとしたフィクションです。この年の3月
に公開された黒澤明の【天国と地獄】以降、都
内を中心に誘拐事件が多発したそうです。その
当時、全国・津々浦々の子どもの居る家庭では
暗くなっても外で遊ぶ小さな子は、親からこう
言われてました。『いつまでも外で遊んでると
とコトリ(子取り)がくるぞ』とね。子どもた
ちにとって、それは身の毛のよだつ怖い存在で
した。ワシ自身は・・夜になると『コトリ』の
ようなマントを羽織った悪党どもが、子どもを
さらって外国へ売り飛ばす、恐ろしい組織があ
ると思うてましたよ、マジで。いやあ、50数
年ぶりに『子取り』という言葉を思い出したわ。